大学受験において数学は最も差が付きやすい科目である。数学は科目の特性上、得意な人は満点近くを取り、苦手な人は0点となることも決して珍しくは無いからである。そこに確かに才能の類いは存在するが、大学受験の数学という観点からみると正しい勉強法を積み重ねることで容易に河合塾偏差値60に到達できると考えている。今回は筆者自身の経験と塾業界で6年働いてきた経験から偏差値別に数学の正しい勉強法を書いてみる。受験生は参考にして欲しい。
①偏差値40以下
偏差値40以下の受験生に多いのは、問題の意味もよく分からないままになっているというタイプである。そもそも勉強していないか、していたとしても基礎中の基礎というべきところでつまずいている可能性が高い。スポーツにたとえれば、そもそもルールを知らないか、筋力・体力のトレーニングが足りてないようなものだ。
確かに、興味が無かったり、分からなくて嫌になったりすると、勉強をする気は起きないかもしれない。その要因も、突き詰めると小中学校レベルの知識がキチンと身についていなかったり処理能力不足であったりする。例えば小中学生レベルの計算力が不足していたり方程式を知らなかったりすることだ。訓練すれば誰でも出来ることだが、その訓練が不足している事がつまずきの原因ではないだろうか。
数学は紛れもなく積み重ねの科目である。大事なのはプライドを捨てて、1学年、2学年下の教材を使ってでも分からないところを潰していく必要がある。
②偏差値40~45
偏差値40~45程度の生徒に多いのは、ごく簡単な事はできるけれども教科書の内容を把握しきれていないというタイプである。実際、「習ったような気がするけれどもよく分からないままになっている」というケースが多いのではないだろうか。中には、よくやり方も分からないまま答えを丸暗記しようとする人もいる。しかし、「わかる」ための努力を避け、安易に点を取ろうとしてもそれで出来ることは限られている。
このレベルで行き詰まっている人は、まず1つのことを「わかる」まで丁寧に復習することが大事である。もしまた分からなくなったら諦めずに何度でも先生に教われば良い。「こんな簡単な事を聞くのは恥ずかしい」といった遠慮はいらない。とにかく粘り強く、1つ1つ丹念に「わかる」ことを積み上げていけば、次のステップに進むことが出来る。
このレベルの生徒の質問は、非常に漠然としていている。「自分で何が分かっていて、何が分からないかが分からない」という状態が多い。「この問題が分からない」といっても得てしてその原因はずっと前の部分にある。だから、「質問をしてね」と先生に言われても、何をどう質問して良いか分からずに困ってしまうし、教わっても前提となる知識がないからなかなか理解出来ない。そのせいか、先生に自分から質問しようとする生徒も少ない。だからこそ、まず「わかる」ところまで遡って復習する勇気と忍耐強さが大切である。それを生徒と先生で共有することが壁を破るための第一歩になる。
③偏差値45~50
偏差値45~50程度の生徒に多いのは、それなりに勉強しているつもりでもその反復復習が足りていないタイプである。先生に教わればわかるのだけれども、自分でやろうとすると出来ない。一言で言えば復習が甘い。
「一度やったことは、スラスラ出来て当たり前」と自分で言い切れるような勉強をしていれば、このレベルでぶつかることはまず無いだろう。「一度習ったのに」「あのときは出来たのに」と思っても、今できなければ「身についた」とは言えない。「あれ?何だっけ?」ということがある内はまだまだ復習が不十分だ。「あたりまえ」と言えるよう、「スラスラできる」まで何回でも繰り返し練習をしよう。難しい問題に挑戦するよりも基礎的な問題を完璧にする方が先決である。
また、「忘れやすい」ということは理解が曖昧であるということかもしれない。なぜそうなるのか、なぜそうするのか。それを意識しながら覚えれば、より忘れにくくなる。単に「やり方」を作業として覚えるよりも「なぜ」という考え方を理解して関連づけて覚えた方が記憶には残りやすい。
何度も反復されたことの方が覚えやすく忘れにくい。断片的な知識よりも関連づけられた知識の方が覚えやすく忘れにくい。そういう人間の記憶のメカニズムを上手く利用して勉強していくと良いだろう。
このレベルの生徒は、同じ事を何度も質問しに来る。もっとも、質問すること自体は良いことであって、遠慮する必要はまったくない。ただし問題は、以前に「分かった」と言っていたはずの事が身についておらず、定期テスト前などに慌てていることが多いことにある。それは、教わっただけで分かった気になってしまうからだろう。「わかった?」と先生に聞かれるとつい「はい」と答えてしまうが、その場で解き直しても出来ないことが多い。「わかった」といっても先生が言っていることを理解しただけであって、自分が「身につけたかどうか」が基準になっていないのである。従って、「本当に自分だけで解けるのか」を基準にしながら自分に厳しく反復練習をすることが課題となる。また、ノートも先生の板書をそのまま写すのではなく、後で復習したときに理解出来るかどうかを考えながらノートを取ると良い。
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